その年を振り返りつつベストディスクを発表する年末恒例企画
「夜ジャズミーティング」
松浦俊夫さん、沖野修也さん、そして須永辰緒さん
ジャズDJ3人がそれぞれ選ぶ、2024年のベスト3作品をご紹介します。
詳しくは番組でお楽しみください。
■夜ジャズ.Net#195 - 夜ジャズミーティング2024
https://www.jjazz.net/programs/yorujazz/
配信期間:2024年12月18日(17:00)~2025年1月22日(17:00)
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【2024 年間BEST3アルバム】
selected by 沖野修也
2024年は、レジェンドの逝去が相次ぎ、過去作品を振り返る事がいつも以上に多かった年でした。
そのせいか、アルバムの評価基準が高くなり、年間ベストを選ぶのに苦労しました。
自分を含め、現行+若手は、アルバムのクオリティーをもっと上げる必要があると思います。
勿論、良い作品が沢山リリースされたので刺激を受けましたし、音楽業界の不振が嘆かれる中、多くのアーティストが創作のモチベーションを失っていない、むしろ、量産してさえいる事は"希望"かもしれません。そんな中でも僕が愛聴した3枚を選びました。
『You'll This Later / Alvin Cobb Jr.』
アトランタ在住で、自身のトリオはシカゴを拠点とするドラマー、Alvin Cobb Jr.のデビュー作。グラスパーの登場で盛り上がるUS現行JAZZシーンでは、個人的にカマシ以来の逸材だと思う。打ち込みドラムの人力による再現が、先端でなくなった現在、ジャズにおける先鋭性を模索した意欲作。透明感と神秘性のあるボーカルをフィーチャーした現代版のスピリチュアル・ジャズの一例でもある。
『Wave Theory / Tamil Rogeon』
Harvey Sutherland's Bermudaのメンバーでもあり、Aloe Blaccから、 Allysha Joy作品にまで参加するバイオリン奏者Tamil Rogeon。70年代のMichał UrbaniakとUrszula Dudziakを彷彿とさせる楽器と歌声のコンビネーションにシンパシーを感じた。オーガニックなサウンドでありながらフューチャリスティックな世界観にも共感していたら早速彼からコラボのオファーが舞い込み、共作曲の構想を膨らませている。
『The Glass Frog / Greg Foat』
UKのピアニスト、Greg Foatの2024年7月に出た新作(と思いきや11月にはニュー・アルバムをリリース)。サントラ的スタイルを得意とする作曲家でもあるが、彼のフュージョン的な音使いが気に入っている。シネマティックな音像とハンコック風のインプロビゼーションの組み合わせがありそうでなく、同世代を生きるクリエーターとして大いに触発されている。それにしても彼の多作ぶりには脱帽。
Years Best -沖野修也- |
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【沖野修也 (KYOTO JAZZ MASSIVE / KYOTO JAZZ SEXET)】
音楽プロデューサー/DJ/選曲家/作曲家/執筆家/ラジオDJ/The Roomオーナー。2000年にKYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「ECLIPSE」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を獲得。これまでDJ/アーティストとして世界40ヶ国140都市以上に招聘された国際派。2015年、ジャズ・プロジェクトKYOTO JAZZ SEXTETを始動。名門をブルー・ノートよりアルバム『MISSION』をリリース。2021年、Kyoto Jazz Massive 2ndアルバム『Message From A New Dawn』を19年振りに発表。2022年からは、Kyoto Jazz Massive with Echoes Of A New Dawn Orchestra名義でバンドとしてヨーロッパ・ツアーを敢行している。著書に、『DJ 選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』、自伝『職業、DJ、25年』等がある。2024年、Kyoto Jazz Massiveがデビュー30周年を迎えた。6月に30周年記念EP、『KJM EOANDO』をリリース。iTunes Dance album chart No.1、収録曲'Impulisive Procession"が、Traxsource Broken Beat/Nu-Jazz chartでNo.1を獲得。12月に『KJM COVERS - Kyoto Jazz Massive 30th Anniversary Compilation 』 をリリース。来年1月にはKJM 30周年記念ライブ・ツアーも決定している。
http://www.kyotojazzmassive.com
https://ameblo.jp/shuya-okino
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selected by 松浦俊夫
やれることを、一つずつ積み重ねた2024年。
ふと顔を上げれば、次の景色が広がっていた。
2025年も、この道を、ただ真っ直ぐに進んでいく。
「我が道を、行こう。」サントリー。
『天使乃恥部 / 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール』
本作は、聖なるものと俗なるもの、純潔と堕落という二律背反を音楽という形で鋭く描き出しています。
その芸術的野心と挑戦的な姿勢は、まさに唯一無二。
聴く者に深い感銘を与えると同時に、音楽の枠を超え、人間存在の矛盾に迫る問いかけを投げかけています。
『Y'Y / Amaro Freitas』
アマゾン流域の都市マナウスでの経験からインスピレーションを得た本作は、ブラジル音楽の伝統と現代ジャズを融合させた意欲的な作品です。
アフロ・ブラジリアンのリズムや先住民の文化を探求しながら、フレイタスはアルバム全体を通じて自然との深い結びつきや人類のルーツへの回帰を音楽的に描き出しました。
『Electric Rider / 馬場智章』
全曲を馬場が書き下ろし、共同プロデューサーにBIGYUKIを迎えて紡ぎ出した本作は、まさに現在進行形の音を体現した傑作です。
伝統的なジャズの精神を受け継ぎながら、新たな音楽的視座を加えたアプローチは、本作の最大の魅力と言えるでしょう。
その鮮やかな昇華は、国内外で高く評価され、特に先日行われたジャズフェスティバルでも大きな注目を集めました。
【松浦俊夫】
1990年にUnited Future Organization (U.F.O.)を結成し、5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表、高い評価を得る。
2002年にソロ活動を開始後、国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。
イベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、感度の高いライフスタイル・スポットの音楽監修も手掛ける。
2013年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクト「HEX」を始動し、Blue Note Recordsからアルバム『HEX』をワールドワイドにリリース。2018年には、
イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト「TOSHIO MATSUURA GROUP」のアルバムをリリース。
2024年、その作品がイギリスBrownswood Recordingsよりアナログ盤として再リリースされた。
「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00 / One Jazz UK 金曜15:00)好評オンエア中。
http://www.toshiomatsuura.com
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selected by 須永辰緒
国内外問わず新世代のジャズは新たな多様性とそもそもの演奏力を得た本物を実感することを確認できる一年でした。
彼らは「誰それっぽい」「誰それの影響下」を離れてオリジナリティと新しいアプローチを獲得したし、新進ボーカリストも続々とデビュー。
圏外でもネオECM的な良質作も多く今年は悩んだー。
フィジカル・リリースが待たれる2025年も益々楽しみになりそうです。
『Place Between Us / OKVSHO』
スイスのチューリッヒからはこの兄弟DUOをピックアップした。ヒップホップリスナーにも届くような
エレクトロニックとオーガニックが融合した作品。背景が分からないのでアレですが今後も活躍
が期待できるユニットかと思います。コンテンポラリー作品としてもエレクトリックマイルスを
彷彿させるような雰囲気もあり多くのジャズリスナーにも紹介したい。
『Flower Of The Soul / LIONA FLORES』
友人たちの間で話題になったイギリス系ブラジル人のソングライターによる1st.アルバムは名門Verveからのリリース。
ボサノヴァを基調としながらもSSWやインディ・ポップもアレンジ、デヴューアルバムながら、既に大物感を感じる。
2024年、このアルバムからは2曲をヘビープレイしました。早くも次回作が楽しみです。
『True Story / MALCOLM JIYANE TREE-O』
南アフリカの若手トロンボーン走者・鍵盤奏者マルコム・ジヤネの2nd.アルバムをピックアップしました。
メンバーには現在の南アフリカの若手奏者を揃え、アットホームなセッションで作り上げたそうです。
特にピアノのンコシナティ・マトゥンジャ(Nkosinathi Mathunjwa)は今後注目すべきプレイヤー。ラップともポエトリーとも言えぬ「声」もセッションで録音され、シーンの熱気も伝わってきます。
もはや全世界にアンテナを張っておかないとカバーできませんね。
【須永辰緒 プロフィール】
Sunaga t experience =須永辰緒によるソロ・ユニット含むDJ/プロデューサー。 DJプレイでは国内47都道府県を全て踏破。また各国大使館と連動して北欧諸国=日本の音楽交流に尽力、欧州やアジア、アメリカなど世界各国での海外公演は多数。 MIX CDシリーズ『World Standard』は12作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム 『須永辰緒の夜ジャズ』は20作以上を継続中。国内や海外レーベルのコンパイルCDも多数制作。国内外の多数のリミックスワークに加え自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"としてアルバムは7作を発表。最新作は「STE with J.Lamotta Suzume/Re Blue」(Flower)。主宰する音楽レーベル「DISC MINOR」からはヴァイナルのみの内外ライセンス作品のリリースも活発化させる。多種コンピレーションの 監修やプロデュース・ワークス、海外リミックス作品含め関連する作品は延べ250作を超えた。加えて企業ブランディングや商品開発、音楽や料理などの著作、連載も多数携わる。また出身地である栃木県足利市の「あしかが輝き大使」として地域でも活動中。
http://sunaga-t.com
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